『Lindmo』で見え隠れしたマグネとモートンの仕事の仕方と関わり

昨日の『Lindmo』では、マグネとモートンとの仕事の姿勢の違い、そして関わりが見え隠れする言葉がいくつかありました。
昨日書いた「可能性を与えてくれる人」というのもそうですが、他にもあるなあと気がついたので書いてみます。

マグネの仕事の姿勢は基本、「選びとること」だと彼は言っていました。
そして、自分は仲介者でありたいと。この仲介者というのは言葉通り捕らえれば、誰かに誰かを紹介するのを想定しますが、その後の話の中で彼は、曲も芸術も、誰かがそこに意味を見つけ自分のことのように思えたら、忘れられないものになるのだとして、『曲も芸術も、誰かがそこに意味を見いだして、新たにそこに作り手が意味を置いたときに初めて完成に至る』と言っていました。これは、もしかしたら、全般的な意味だったのかもしれません。
というのは、以前にもご紹介したように、『Out of my hands』でモートンがEspen LindやKENTの曲をやったりしたのは、マグネからノルウェー音楽をもっと他の人に知って貰ったらいいというような助言があってのことだと。(KENTはスエーデンじゃんというツッコミはあるのですが)
マグネはここで、モートンとノルウェーの音楽で化学実験したかったのかなと。自分が働きかけることで、モートンのアルバムに新しい可能性を見いだす。芸術作品が、「炉から出るまで何が起きるかわからない」ように、モートンがそれをリリースするまで、どんな曲が出来るかはわからない。でも楽しい。そんな感じ。

うろ覚えですが、a-haにモートンを誘ったのも確かマグネだった気がします。
「選び取ること」は、あれだけのプロジェクトを抱えていたら、当然「選び取ること」は重要になってきますね。
誰もが陥りがちな『誰にでもいい顔をしていて、誰にでもよく思って貰おうとしていたら、自分自身が消耗する』という状態ではなくて、関係を気づきたい人と自由でいられる関係を築くというのは、実に合理的だと思いました。

一方で、モートンはというと、Gabrielleにセンタリングを薦めたように、大きな仕事を前に自分をどう保つべきかとうところに焦点があるように感じました。そして、他のインタビューでも言っていたように「手を伸ばし続けているところに、幸運の女神は味方してくれる」のだと。受動的に聞こえて実に積極的に、「自分の感覚」を中心において新たなことを模索しているように思います。マグネが自分の「手」「指」に耳を傾けるなら、モートンはその時の「感じ」「直感」からなのでしょう。雰囲気というか…。曲を選んでるときは自分にとってのベストを選んでいるけど、アルバムが完成したら、その時の感覚とは違うというのも、一種の「直感」のようなもので選んでいるからなのかなと思います。アルバム作りでも、自分は当事者である以上客観的ではないという理由から、第三者的な信頼のある人の意見を聞くというのも、多分、他の二人とは違うところだと思います。
モートンが『Out Of My Hands』でマグネの助言を聞いたのは、まさに、きっとその部分。
マグネがそのアルバムにおいて当事者ではなく、かつ、その時に客観的に見られる立場にいる人だからではないかと。
こういうモートンの受け入れる姿勢と攻める姿勢、そして、自分には幸運の女神がついてると言えるポジティブさが、マグネにとっては可能性を信じさせてくれる、大事な要素だったのだろうなと。
NRKのニュース動画で言っていた、「あらがえない何か」にひっぱられての再結成というのは、その言葉そのものが、実にモートンらしいです。まさに、「天の采配」(Heaven Cast)なのだということかも。

新しいことを模索して、自分が喜びを感じるものについては手を伸ばす、興味があれば助言にも従っていくモートン。
化学反応が起こして、それを見ることが大好きなマグネ。
化学反応が起きて出来るもの。それは新しい体験で、勿論、そういったものはモートンは興味深いのだろうし
マグネにとっても、そういうモートンの姿勢は楽しいのだろうと推察されました。

モートンは「a-haの声」とポスターに書かれたり、時として「ポールの曲があってこその、モートン、a-ha」と言われることもありますが、ポールの曲は勿論ですが、私はマグネのプロデュース力には一目置いていて、-それは多分、マグネの選び取る力と化学反応させたいという感覚から来てる- マグネのその力がなかったら、そしてモートンのあの直感力がなかったら、ポールの曲がないのと同じくらい、a-haに成功はなかっただろうと思うのです。

マグネの仕事の仕方も、モートンの仕事前のセンタリングのことも、どちらもとても勉強になるお話でした。
昨日一日の殆どを費やしちゃったけどね。(字幕を関係のあるところだけ訳したんです)

かつてPet Shop Boysが「君にはルックスがある、僕には頭がある。さあ、稼ごうぜ」と歌っていましたが、a-haの魅力は言葉にしにくい部分にあるのかも。Gabrielle曰くの「魔法が使える」直感のさえている人と、仲介者(リーダー)、そして職人気質な人。
a-haの「Take On Me」での快進撃は、ノルウェーの新聞ではしばしば「冒険譚」と言われていますが、この面子は確かにRPGです。
誰が勇者かはさておき、そんな感じがします。(脳内で「遙かなる時空の中で」のキャラにメンバーをあてがってしまったw)

投稿者: Tomoko

1985年7月4日、期末試験の直前で部活が休みだった日に、たまたまみたテレビ神奈川の「ミュートマ」で『Take On Me』を見てモートンに落ち、8月25日にアルバム発売というので誕生日プレゼントにしてもらって、モートンの声の多才さに感動。その後、タイトルを最後に言うタイプのラジオで「この声綺麗」だと思ったら「I've been losing you」で、これまたモートンだったことから、自分にとって最高の声だと確信。2010年の解散に伴い、翌年からノルウェー語を勉強しはじめ、現在はMCは聞き取れるようになりました。2022/05/20発売の『a-ha THE BOOK』で、モートンのソロについて書かせていただきました。

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