Hjemkomst:『A Kind Of Christmas Card』誕生秘話ーモートンが惚れ込んだ歌のこと

まずは、このビデオから。

これは、2014年のノルウェーの夏の音楽特番でのインタビュー。『Brother』をリリースして、夏のツアー真っ最中ということで呼ばれているのですが、インタビューの内容はほぼ『Brother』関係ないものでした。さて、この中で司会者が、「ノルウェーで一番良かった場所はどこ?(小声で)トロンハイム」というシーンがあります。これに対してモートンが、「『Wild Seed』のときの重要なプロセスは、トロンハイムのニダロススタジオで起きた」ということを言っています。『Hjemkomst』にも、このトロンハイムのニダロススタジオでの出来事が書いてあったのですが、その中で面白い話があったのでシェアします。

ある日、モートンはトロンハイムの町を歩き回っていて、偶然、3人のノルウェー人ミュージシャンに会った。彼らは、初EPをリリースし成功を収めたばかりのLocomotivesだった。「僕はこれまで、ノルウェーのミュージシャンで、これほどまでに音楽性とエネルギーを兼ね備えてる人を殆どみたことがなかった。僕は夢中になって、彼らを信奉したんだ」

Hjemkomst

Locomotives。聞いたことありませんか。『My Woman』といえば、わかるでしょうか。この曲です。

もうわかりましたね、モートンが2008年に出したアルバム『Letter from Egypt』に収録されている『Movies』のオリジナルです。

Locomotivesのメンバ-がニダロススタジオにやってきて、モートンに自分たちの曲を数曲、披露した。そのうち一つが『My Woman』。モートンは、あっという間に、その曲に恋に落ちた。

Hjemkomst

つまり、1994年に初めて聞いて恋した曲をその14年後、自分のアルバム収録曲にし、そのアルバムからのファーストシングルにしたのです。Locomotivesはこの曲を1999年にリリースしていて、ボーカルはその繊細な歌い方について「モートンに勝るとも劣らない」とDagbladetの批評家に褒められたそうです。

それだけではありません。

「こんな曲を僕は書きたかった。輝きのある曲だった。特にリフレインがよかった。」

Hjemkomst

モートンはこの曲に何年もの間夢中になり、『A Kind Of Christmas Card』の直接のインスピレーションとして使った

Hjemkomst

この話、どこかで聞いたことあるなーと思ったら、このインタビューで思いっきり言ってますね。私が聞いたことあるのは、『My Woman』の話でしたが、このインタビューでも思いっきり、『A Kind Of Christmas Card』はこの曲からインスピレーションを得たんだよと言っていますね。14年経っても、それどころか、この『Hjemkomst』という本の中でも言うのだから、よほど惚れ込んでいた(いる)んでしょうね。

ところで、なんで1994年に感銘を受けた曲を2008年リリースになったかというと、これは、タイミングだと思います。『Wild Seed』をリリースした翌年、モートンはノルウェー語版のアルバム『Vogts Villa』を出しています。その次が、『Movies』が収録されている『Letter From Egypt』(2008年)です。1996年当時、モートンは『A Kind Of Christmas Card』のジャケットをトップページにした公式サイトを持っていました。しかし、次のアルバムをもうすぐ出すよみたいな告知のあと、サイトはなくなり、1998年にa-haはノーベル平和賞記念コンサートで復活を遂げました。『Out of my hands』に含まれていた『When I reach the moon』も、私の記憶が確かなら、この96年~97年頃にはあった曲のはずです。しかし、a-ha休止中に出会った曲を含む『Letter From Egypt』を2008年にリリースしたあと、a-haは2009年に解散を発表、2010年に解散。2014年の『Brother』の翌年に再結成するというのは、なかなか興味深いものがあります。

夏の音楽番組の最後のほうで、モートンが「小さい曲でも、何かしらあって、それが大きくなっていく」というようなことを言っています。小さな種だったり…とか。小さな種というのが、まさに「Wild Seed」なんだろうなと思いました。しかし、久しぶりに見ましたがこの司会者惜しい。色々いいこと言ってるのに深掘りしないで次のに話題に移ってしまうから、「そのニダロススタジオでの話、もう少し詳しく!」とか「その小さい種を大きくしていく話、もう少し詳しく!」と何度も思いました。まあ、もう一人のゲストの話もあるから、そういうわけにいかなかったんだろうけれど。

最後に、モートンの『Movies』と、『A Kind Of Christmas Card』のビデオ入れておきます。

投稿者: Tomoko

1985年7月4日、期末試験の直前で部活が休みだった日に、たまたまみたテレビ神奈川の「ミュートマ」で『Take On Me』を見てモートンに落ち、8月25日にアルバム発売というので誕生日プレゼントにしてもらって、モートンの声の多才さに感動。その後、タイトルを最後に言うタイプのラジオで「この声綺麗」だと思ったら「I've been losing you」で、これまたモートンだったことから、自分にとって最高の声だと確信。2010年の解散に伴い、翌年からノルウェー語を勉強しはじめ、現在はMCは聞き取れるようになりました。2022/05/20発売の『a-ha THE BOOK』で、モートンのソロについて書かせていただきました。

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