初期のa-haしか知らない人は、モートンといえばルックスと声のいいアイドルっぽいボーカルだ。
ブレインはポール、リーダーはマグス。
「じゃあ、モートンは何をしてるの?
あとの二人は楽器演奏してるよね、曲も書いてるよね…?」
モートンファンが何度も浴びせられた質問を、モートンはその何百倍も浴びてきただろう。
「Take On Me」は3人の共作となっているけれど、モートンが加わる前に原型があったのは有名な話。
だから、1stアルバム『Hunting High and Low』はともかく、2ndアルバム『Scoundrel Days』もモートンの曲がなかったことで、
「ああ、やっぱりモートンは歌だけなんだ」という印象が強くなったように思う。
今ならば、「モートンはプロの表現者なんだからそれでいいのよ。a-haはそれぞれが職人なんだから」と言える。
けれど、3rdアルバム『Stay on these roads』が出る頃は「自分の役割」にモートンは彷徨っていたんじゃないかと思う。
うろ覚えだけれど、ボイストレーニングを受け始めたのもこの頃。
そして、Stay on my love♪の部分が、自分の鼻歌だったんだよとインタビューで答えていたのも、とても印象的だった。
このアルバムでのモートンがクレジットされてるのは、Stay on these roadsとTouchy!の2曲。
ただし、Take On Me同様、「3人での共作」だった。
神様の話をしたり、環境問題の話をしたり…。
自分はアイドルだけじゃないんだよ、色々考えてるんだということを、インタビューの度にモートンはさりげなく発信していた。
私は本気で、モートンの作る曲が聴きたいと願った。
この人の「精神世界」を知りたいと。
アルバム「Stay on these roads」で3人の共作があったことで、次のアルバムは期待することがあった。
それは「3人の共作でない、モートンの曲」。
けれど、続く2作のアルバム「East of the sun west of the moon」にも「Memorial Beach」にも、モートンの曲はおろか3人の共作で名前がクレジット
されてるのすらなかった。
モートンはきっと、歌詞を書いてるんじゃないだろうか。
でも、採用されてないんじゃないだろうか。
そうした疑念の中、モートンはソロアルバムを発表した。
Poetnes Evangelium、Wild Seed,Vogts villa。
私はWild Seedのほうを先に知ったので、「やっぱり!」と思った。
「やっぱり、自分で曲を作ってみたかったんだね!」と。
最近知ったのだが、Poetnes Evangeliumはメンバーに内緒のソロプロジェクトだったのだとか。
これは、私の仮説でしかないけれど、モートン自身はどこかで「自分の世界を表現してみたい」という希望があり、その一つが「聖書の世界を表現する」プロジェクト(Poetnes Evangelium)で、このHårvard Rem氏との出会いで「自分の力で自分の世界を表現する方法」を知ってWild Seed,そしてvogts villaに繋がっていったのではないかなと思う。
何はともあれ、漸くモートンも、モートンファンも「歌詞も曲も作らないね」という呪縛からこのソロによって脱出出来たわけだ。