NRK(ノルウェーの国営放送)のニュースサイトに『True North』のレビューが掲載され、5点(最高は6点)を獲得しましたのでご紹介します。
元記事:https://www.nrk.no/anmeldelser/anmeldelse_-a-ha--_true-north-1.16144883
a-haの帰還は、自然への賛美
環境へのキャンペーンは続く。3人による貢献は、高品質の心をいやす素晴らしい作品だ。
a-haが7年ぶりに新曲を披露するのは、月面着陸に匹敵する出来事だ。
それはともかく。
『True North』は、マグネ・フルホルメンによると「北極圏からの手紙、北ノルウェーと新しい音楽からの詩」ということだ。
『True North』はまた、ボーデが2年後の欧州文化首都に選ばれたことをきっかけとした、ボーデ2024との共同制作の映画でもある。
史上最大のノルウェーバンド
音楽的には、如何にして私たちが環境や自然と協力できるか(つまり私たちがどのように自然破壊してきたか)と将来私たちを待ち受けているものに、スポットライトを当てている。
悲観的だが、結局のところ、よく知られているテーマだ。
a-haの内省的なメランコリックさほど、このテーマにぴったりなものはない。
史上最も成功したノルウェーのポップバンドは、ノルウェー音楽の威厳のある巨大輸出船―プリマドンナのような気まぐれっぷりと、内輪もめと、世界クラスのエキセントリックぷりをもつ―でもある。
a-haとの仕事に参加することは、決して快適とは言えない。
以前にはメンバー全員が新譜作成に対して、敬遠したい思いを激しく吐露している。モートン・ハルケットは、神様から与えられた声を持つ到達不可能な人物であり、一方でマグネ・フルホルメンは、物事を動かしていく中心となっている。
バンドが一緒に時を過ごすのは最悪なことなのかもしれないが、聞く側としては、素晴らしいプレゼントだ。
素晴らしいフィルハーモニー
『True North』は、人間不信と探求を、モートンのその象徴的な声をもって素晴らしいクオリティで表現する。 シルクの喉から紡ぎ出される最初のトーンが耳をくすぐる瞬間、天国への門に立ち、天使がサウンドトラックを決めたかのようなイメージが脳裏に浮かぶ。
オープニング曲である『I’m In』は、グループにとってメインの楽器であるモートン・ハルケットの声帯があますところなく活かされている。
Anders Eljasの指揮によるArktisk Filharmoniによる伴奏と、マグネ・フルホルメンの間違いない作品は、この、自然の持つ美しさや純粋さ、そして本質への憧れを描いた強烈なオープニングだ。
まさにそれが、冒頭部分に反映されているのだ。
素晴らしい伝え方
2曲目の『Hunter in the Hills』は、ポール・ワークター=サヴォイがプロデューサを勤める。この曲でArktisk Filharmoniが更に輝きを増す。この曲は音楽的にはより身近で、特にセレモニー的な感じはないのだが、不思議なことに(『I’m In』と)同じような雰囲気を感じさせる。
また、リフレイン部分での魅惑的な鍵盤の音が、雨や霧、枯れた木を思い起こさせる。
フィルハーモニーの弦楽器は、上質な1920年代のノワールの雰囲気を思い起こさせ、またコンビネーションは全く新しいものに感じられる。この完璧で素晴らしいオープニングは、より強力なものとなった。
決して期限切れにならない
レコードを飛び越えて、a-haは感動と、彼等独自のユニークな音楽を見つける才能と、興味深い意外性を見せつける。アルバムを通しで聞くと、初回は感動するだけかもしれない。だが、二回・三回と繰り返すうちその都度、新たな価値のある要素を見出すことになる。
フルホルメンとワークター=サヴォイはそれぞれが6曲ずつ曲を作った。奇跡的なことに、バラエティーにとんだ表現にも関わらず、(アルバムとして)一貫した文脈を保っている。ノスタルジーと現代的な部分の両方を制御しているのだ。
『Forest fo the Trees』では、80年代のシンセにも再会することができる。その一方で『Make Me Understand』の表面では、よりアップデートされた表現も見て取れる。
この3人組は結局のところ、期限切れにはならないのだ。彼等は、安定して新たなアイディアに満ちているのだ。
シンプルな弱点のサイン
『True North』は、完璧ではない。 (アルバムの)終わりに向かう箇所に弱点があるのだ。
『You Have What It Takes』は、いうなれば、二流のクリスマスソングのように聞こえる―アムフィセンター(管理人註:トーンホテルなどを保有する大手チェーンの子会社が経営する大手ショッピングセンターチェーン)で12月に登場する退屈で意味のない曲のような感じ―の。ギターはイマイチで、安っぽく聞こえる反面、ボックスミュージックの弦楽器は素晴らしいものだった。更にハルケットも、どこか退屈しているような感じに聞こえる。
これは『Summer Rain』にもある程度当てはまる。主なところでは、これといったものがないように聞こえるが、とてつもなく素晴らしいリフレイン部分が救いとなっている。
情熱的な愛
とはいえ、a-haは自分たちが伝えたいことがよくわかっていて、人生において決して近道をしようとはしない。根底に、情熱、ビジョン、そして創造性があるのだ。
自然に対する愛と、自然を破壊する力への軽蔑が丁寧に伝わってくる。自然というものの顔に銃を突きつける石油、(自然に対する)敬意のなさや嘘というものについての。
北ノルウェーが、石油生産の中心であり自然が酷い状況になっていることを知ることは、当然のごとく、違った意味で人の心を動かす。
『True North』が、このアルバムで最高の曲の一つである『Oh My Word』で終わるときには、また最初から聞きたいという熱い思いを持つようになるだろう。そしてそれは、悪い兆候ではない。
私はいつかa-haがコミカルで酷いレコードを作って、それを『a-hahaha』と揶揄してみたいと思っているのだが、今回もまたそれは叶わなかった。
NRKの記事だというのに、なんだか「SPA!」とか「ZAKZAK」に掲載されてるような文章だなと思いました。(特に最後のほう)。
『You Have What It Takes』が割とコテンパンに言われていますが…、退屈そうに歌ってるようには個人的には聞こえませんでしたけどねぇ…。とはいえ、この批評家の好みはわかった気がします。『I’m In』は別として、褒めてるの全部ポール曲ですからね。冒頭で、モートンのボーカル力とマグネの物事をひっぱっていく力を褒め、本文ではポールの曲作りを(ポールの)名前を出さずに褒めるという…。もしやこのライター、ツンデレ…(冗談です)。
文末に出てくるアムフィセンターですが、大手ホテルチェーン「トーンホテル(Thon Hotel)」と同じ親会社オラヴ・トーン・グループの子会社で、トーン不動産が経営するノルウェー各地にあるショッピングセンターのようです。オラヴ・トーン・グループは、三井不動産グループみたいな感じでしょうか。ホテルと不動産とショッピングモールをそれぞれ手広く手がけているような…。ホームページを見る限り、ららぽーととか、ラゾーナとかを思い起こしました。ちなみに、トーンホテル・オペラは、オスロ駅から近く(コンサート会場のオスロスペクトラムとは駅の逆側だけど)、スト中でも十分行き届いてるホテルでした。コロナが収束して、円安も終わってまた行けるようになるといいんですけどね。