Dagbladet 2022年お誕生日記事(3):「地球を救うには自分たちが変わることが大事」

モートンのお誕生日記事その3。今回が最後です。途中、Inez(イネツ)の惚気も入るので苦手な人はブラウザバックをお願いします。元記事:https://www.dagbladet.no/kjendis/deler-sjokkerende-detaljer/77356012


3日後、別のホテル。今回はブリストルホテルだ。ハルケットは他の客から離れた、隅の暗いところに一人で座り、アフタヌーンティーを楽しんでいた。

-何枚か写真を撮らせてもらっても良いでしょうか。

― 今?ダメだ。ボクはこれまで表紙(撮影)で、国王と祖国の為に出来る限り稼いできた。写真撮影されることは僕にとっては全く興味のないことなんだ、80年代の最初の撮影ラッシュの後に僕らがそれに気づいてからずっとね。

彼は、それよりも環境や気候について話したかったのだ。

― 自然にとっての人類は、我々にとっての今日のプーチンのようなものだ。僕たちは、既にずさんな態度でおいやったところに、(更に)容赦なく踏み込んでいるんだ。

そして、それはありとあらゆる種類の自然に対して行われているのだということを、モートンは我々に思い出させた。我々が目にしているのは、そのほんの一部だということも。

― プーチンの行動は、配慮に欠け誇大妄想に満ちているが、僕らが自然に対して行っていることもある意味大差ない。そうした行動の結果が、現在、表面化し始めているんだ。

– 実際、あなたは世界を救う為にどれほど活動されているのでしょうか?

― もし、僕らが今の時代を変えようと思うのなら、本気で取り組む意志をみせなくてはいけない。僕らがよく知っている地球は、僕たちがしてきたコントロール方法によって引き裂かれている、それこそ、プーチンが彼が頭の中で描いている世界を維持するためにやっていることと同じようにね。でも、僕ら人類が一致団結して、一つの巨大な有機体として行動すれば、比較的速やかに信じられないようなことも成し遂げることができる。ある珊瑚礁では……

英語の話せるウエイトレスが、ハルケットの隠れ場をみつけ、わかりやすい笑顔でコーヒーがいるかを尋ねた。そしてすぐ、熱々のコップがテーブルに運ばれてきた。

―僕はコーヒーに関してはとても敏感なんだ、だからランダムに出されるものは怖くてね。ロブスタ種については、避けるようにしている。(ロブスタ種は)悪質なコーヒーの種類で、頭痛や目眩を引き起こさせる可能性がある。アラビカ種のほうが僕にとっては遙かに良い、浅煎りではなくて深煎りがね。(深煎りのコーヒーは)一般的に、より多くのカフェインを含むと思われているけど、実際はそんなことはないんだ。

彼は、コーヒーカップに身を乗り出し、コーヒーが含む豆の種類を判別するために香りを嗅いだ

―ふむ。空中に他の香りもあるから確実とはいえないけど、でもロブスタ種っぽさを感じる。ということで、僕はこれを飲みたいと思えないな。

彼はコーヒーカップを遠ざけた。

―それで、どこまで話したっけ?

– 珊瑚礁について何か言っていたよ。

―ああ、そうだった。僕らは珊瑚礁について勉強することで、社会のあり方について多くのことを学ぶことができる。住民、そして社会がどう役割を果たすかということを。健康的で美しい珊瑚礁では、無数の生物種が激しい競争社会の中でそれぞれの役割を果たし、相互作用していく。珊瑚礁は外部からその存在を脅かされない限り、何千年も生きることが出来、世界の広大な海域を満たす様々な生物の種を守る場所になる。珊瑚礁の健康状態は、この地球の健康の重要な指標となるんだ。

人類については、彼は、どの猿社会をとっても人間社会と似ていることが際立つと彼は考えている。

―僕たちが議論していること全て、男女平等についてや、人種差別、女性に対する男性の振るまいは、私たちの根底にある衝動から来ているもので、その衝動は私たちが作られたこの自然の中で自分達を守るためや安全に生き延びるための行為だった。それは珊瑚礁や手つかずの自然の中なら上手く働くものだが、そういったシステムに嫌悪を示すなら、私たちは自分たちの霊長類としての性質を理解しなくてはいけない。
政府の方針で変えられるものではないが、(自分達の)態度…たとえば、偏見に対する態度を変えることはできる。僕も、コミュニティでの議論はアジェンダに縛られて遅々として進まず、そうこうしてるうちに、向かい波に遭い、進歩が途切れてしまうということを経験している。結果、僕らは他の猿社会同様、ただ立ったまま物を投げ合うだけになるんだ。自然界で成功する大前提は、多様性と循環で、そこでは…

まるで流れ出るような言葉の数々は、テーブルの上で音を立てる電話によって打ち切られた。それは、彼の同棲相手からで、彼がいつ来られるか尋ねるものだった。彼らは、彼と彼の娘の誕生日を祝う予定だったのだ。彼は「うん」「わかった、オッケー」と呟いた。

― イネツ(Inez)は、冗談ではなく、僕がこれまでに会った中で一番厳格な女性なんだ。同時に最も優しい人でもある。

-もうお開きにするべきでは?

― うん。だけど、ここでまとめないとね。僕たちは変わらないといけない。それこそが、最も大事なことで、正しい決断に至る能力を形作るのだと僕は思う。ゆっくりと手間暇かけて、でもしっかり進めて、自分たちを変えていかなくてはいけない。そうしてこそ、地球を救うという目標を達成できると思うんだ。

彼は電話を手に取り、Inezにもうすぐ行く旨をメールした。

Inez Andersson は、彼等の間に甘い音楽が流れるようになる前は、彼の個人的なアシスタントだった。彼等が一緒になって18年、二人の間には14歳の娘がいて一緒に暮らしている。ハルケットには、彼女に加えて、以前の恋人・妻との間に4人の子供達がいる。

– あなたはどんなタイプのパパなんでしょうか

― それは、子供達が答えるべきことだね。でも僕は、彼等に反抗を教えることに関心があるんだ。

– 反抗?

― そう。反抗の中には、自分自身が何であるかを定義する力がある。後になって、(自分にとって)正しいと思えないもの、間違っていると思っているものに対して立ち向かう力になるんだ。もちろん、常に礼儀正しく振る舞うことは大事だが、反抗する神経がなければ礼儀正しいだけのへつらう人間になってしまう。

ハルケットは、彼の子友達と毎月会う予定を立てている。

― これは奇妙に聞こえるかもしれないけれど、みんなで一緒に会おうと思ったら、仕事や他の約束同様カレンダーに入れるべきなんだよ

彼がこれから間に合わなくてはいけない約束もそうした約束だ。彼はテーブルからFarrisの瓶を取ると、上着を着た。そしてケースから黒いサングラスを取り出すとそれをかけ、すぐにホテルの外に出た。

― 車はすぐ外に停めておきたかったんだけどね

彼は用心深く通りに出た。だが何メートルもいかないうちに、彼は(通りすがりの人に)気づかれてしまった。

― 気づいたかい?とても、わかりやすく僕に気づいてたよね。僕の武器は、そうした瞬間に態度を変えず、僕だとわかった人間を近づけさせないことなんだ。

彼は通りを斜めに横断した。何度か周りをみてこっそりとケータイを操作していた。

― 僕はまるで、ハイリスクの刑務所から脱出してきたような気分だよ。

– もしくは、それこそa-haのモートン・ハルケットのような?

― そうだね、僕は彼がどんな感じかよく知っているよ。

Morten Harket:

誕生日: 1959年9月14日.
家族: 同棲相手のInez Anderssonと、彼女との一人娘14歳。以前の妻および同棲相手との間に4人の子供がいる.
長所:人類について気にしていること
短所:人類について、過度に気にしすぎること
読書: 殆どしていない。読書には価値をおいているが、僕の取るべき道ではない。僕は自分自身から何かをみつけなくてはいけないんだ。
聞いてる音楽: 奇妙に聞こえるかもしれないけど、音楽を探して聞くとかはしないんだ。僕の頭の中は他のことでいっぱいだからね。
見てるもの: ケビン・コスナーの『イエローストーン』は良いシリーズだ。『Le Bureau』のファンでもあるよ。
挑発されるもの: あらゆる形での愚かさ
こわいもの: 本当に蜘蛛がダメなんだ、生理的にどうしても無理なんだ。蜘蛛に対してはリスペクトしているし、殺すことはしないけど、夜中に胸の上に乗っているのはダメなんだ。
10年後: 音楽を作ることにまだかき立てられているとしたら、それは健康であることが前提だ。だから、僕は能動的に考えられる大きな課題について、尽力しているんだ。
夢の旅行場所といえば: 特にないんだ、反面、家やLillesandにある別荘にいることに価値を置いてるんだ。


長々と訳してきたお誕生日記事ですが、今回で終了です。モートンの自然に対する考え方や、今後どうしていくべきかという考え方、コーヒー豆の好み、更に蜘蛛が苦手な事までこの記事もなかなか濃い内容でした。

印象に残ったの珊瑚礁のくだりですが、手つかずの自然の中なら人も原始のあり方のままでよかったかもしれない。でも、それじゃダメだってことに気づいた時に、政府がどう指針を出してもそれだけでは意味がなく、本当にこの地球をどうしようかと考えたら一人一人が自分自身を変え、多様性や循環することに目を向けなくてはいけないということですね。

この項はさすがモートンと思いつつも、若干ノルウェーが羨ましくなりました。ノルウェーは男女平等などに積極的に指針を出して政府が変えていこうとしていますもんね。どっかの、夫婦別姓すら拒む国とは大違いです。(以下これについた話出すと長くなるので割愛(笑))まあ、それはともかく、本当の意味で循環を考えたら、たとえば昭和の時代にあった瓶ジュースをお店に返したら1本につき10円貰えるとか(その瓶は再利用される)、ゴミの分類をしっかりして、ペットボトルから駅のホームの材質ができるとかのほうが、闇雲にプラスチックフォークを使わないようにしたり(そもそも店に配布されている分は使わないとゴミだろうに。)、ストローを紙ストローに変えるよりよほど良い気がしますね。

あと10年後の部分は少し切なくなりました。モートン自身、昨年コロナに罹患して感じる事があったのかもしれません。それ以前からかもしれませんが…。

私自身も、モートンがコロナに罹患して配信した動画を見たり、今年1月のニューイヤーメッセージをみて、自分が本当にしたいことをしっかりと見据えてやる必要があるなと実感させられました。格好悪い自分が嫌だからと完璧になるまで待っていたら、何も始まらないですしね。それこそ、私の好きな『Taksameteret går』の歌詞(訳詞リンク)そのものです。

投稿者: Tomoko

1985年7月4日、期末試験の直前で部活が休みだった日に、たまたまみたテレビ神奈川の「ミュートマ」で『Take On Me』を見てモートンに落ち、8月25日にアルバム発売というので誕生日プレゼントにしてもらって、モートンの声の多才さに感動。その後、タイトルを最後に言うタイプのラジオで「この声綺麗」だと思ったら「I've been losing you」で、これまたモートンだったことから、自分にとって最高の声だと確信。2010年の解散に伴い、翌年からノルウェー語を勉強しはじめ、現在はMCは聞き取れるようになりました。2022/05/20発売の『a-ha THE BOOK』で、モートンのソロについて書かせていただきました。

コメントを残す