Lindmo モートン、Gabrielleの悩みを聞く -不安は嘘をつかないが、恐れはいつも嘘をつく

さて、モートン単独の時間は終了となり、ここからはGabrielle(ガブリエラ)が登場、個人的な感情について作った音楽「Snart Gabby」の背後にある、キャリアと子供をもつことの悩みを吐露しました

ガブリエラは以前、マグスと一緒にこの番組に出て、「スペルマン賞コンサートのときにモートンが落ち着かせてくれた」「センタリングの方法を教えてくれた」といって、マグスにからかわれていたことがあります。(「 Gabrielle, マグスの前でモートンとのことを語る 」)
ちゃんとモートンの話に耳を傾けられる人なので安心して聞けます。


https://tv.nrk.no/serie/lindmo/2019/MUHU03005519/avspiller (30分42秒から)

ガブリエラ、新曲タイトルの裏にある悩み


ーさて、次のゲストにあいましょう。
あなたたちは、ある意味、同僚だと思います。

Morten:ああ。

ーポップスターとしてのあるべき姿については共有できるでしょう
8年前、ガブリエラはヒットリストに名を轟かせました。 「Ring Meg」は、そのダンスグルーヴで男の子たちを釘付けにしました。
それからずっと、彼女は素晴らしいエネルギッシュなポップス曲を、世界に響かせています。

(曲紹介)

ーガブリエラに大きな拍手を!!!

ーこんにちは、ようこそ

ガブリエラ:ありがとう

ーギャビー、あなたは今日、新しいアルバム「Snart,Gabby」(すぐに、ギャビー)をだしますが

ガブリエラ:うん

ータイトルについて教えてください。なぜ「Snart,Gabby」(すぐに、ギャビー)というタイトルにしたのですか

ガブリエラ:うん。私はずっとそれをやる気がしなかったの。私はとても個人的なことを書いたのよ。これまで、これから話すことについて話すなんて考えてもいなかったわ。
私は、ただ、自分に対して敬意を持っているだけなの
「Snart,Gaby」は、私が今直面している、「中間地点での停止」について扱っているの。
若い大人から、大人になる過程の。
周りの人はいうの。

「もうすぐあなたも、ステーションワゴン持ちの大人になるよ」って。
「大人になって、レゴランドに家族でいくようになるよ」
「Toroのファミリーパックを使うようになるよ」

ってね。全てがそんな場所なの。

全ての曲は、この場所についてケアしてるの。素晴らしいけど、でも、その時に人が感じるかもしれないこと。何が起きるかわからないことや、自分自身に対してこうあるべきと期待していることについてとか。今、34歳という年齢になったからこそ感じることを。

ー周りの人と合わないって気づいたの?

(ガブリエラ、首を振る)

ー他の計画でのやるべき事リストのこと?

ガブリエラ:合わないのは周りの人じゃないの、自分自身のことなの。自分にとって、日曜日にソファでダラダラしたり、沢山のお酒を買ったり、砂場で子供遊ばせてたり、家族で散歩するっていうことはなんか奇妙なことなの。そういう場面に、自分を想定できない。

キャリアと、結婚や子育ての両立。これくらいの年齢で悩む人は多いですよね。以下、モートンのカウンセリングともいえる持論とガブリエラのやりとりが続きます。

何かを確かにするためには、自分が変化する必要がある

Morten:君が今話したことに限らず、成長というのは、必ず場所をみつけるよ。壊れやすい人生の中でね。安定していて、堅実でまっとうな状態というのは、 それそのものは、発展していかないんだ。変化は、自然のようなもの。変化し、続いていく。ずっとね。
君が、自分自身であろうとするためには、君が変わる必要があるんだ。
君が何かを確実なものにしようとしたら、自分で自分を傷つけるようなこともあるかもしれない、僕はそれが努力であるということが解るし、君が言っている今の感情についても知っている。

ガブリエラ:(涙目)うん

Morten:君は今とても良い経験をしているし、それで得たものもとても良い物だよ。だから人は、永続させようとするんだ。

ガブリエラ:うん

Morten:君はもう既にそれをやっている。それをやる才能が、君の中にあるってことだろ。

ー私はモートンはここにいてよかったと思うわ

ガブリエラ:ええ、そうね

(拍手)

不安は本当のことしか言わないが、恐れはいつも嘘をつく


ーそれで、その衝突する考えについてだけど、家族とのプロジェクトについて…やっていきたいのか、或いは受け入れないのか。そのままにしておきたいのか、どう考えているの?

ガブリエラ:私は、アーティストとしての生活と家族の生活は両立できるべきだと思っているの。それと、同時に私は我が儘だから、アーティストとして何か作るときは、他の人を閉め出してしまう。それが、自分自身であるためには必要なの。私は人や、パートナー、友人や家族を(アーティスト活動とは)別物としてわけることはできる。創作をしている間や、ツアー中はね。でも、「母親業」については違うわ。
今や、母親業は最も重要なものだもの。私は、まだその準備が出来てないという人生の不安があるの。周りの人が話してるの聞くのは興味深いわ。
衝動的な考えはないけど、でも、自分が良い母親になれるかどうかは心配だわ。
だって、自分の願いとか希望を二の次にしないといけないでしょう

Morten:それはただの推測だよね。

ガブリエラ:でもそうでしょ

Morten:それは、恐れから来てるんだよ。恐れはいつでも、僕たちを動かす。でもね、おそれはいつだって嘘をつくんだ。
不安はいつだって嘘をつかない。いつでも本当のことを話す。
それがシンプルな、二つの区別だ。それが解れば、ものごとはもっとシンプルになるよ。恐れはいつも嘘をつくんだ。決して本当のことは言わない

ガブリエラ:(涙目)でも、どうやってその二つを分けたらいいのよ

Morten:恐れは不安があるからみつかるんだ。推測は怖れの上にあるものだ。生きていくうえで出てくるものだけれど、それは、正しいものではない。そこから君がえるのは、君を妨害するものだ。君を押し戻して、動けなくしてしまう。
爆発が起こっているなかで、先延ばしにしてしまうから、上手くいかない。
それは、スキーのジャンプ台でもなければ、店にいく途中でもない。それは君を妨害し、他の事は何もしない。ただ、邪魔して押し戻すだけ。君がアクセスしようとする何かからね。
でも、不安は君を助ける。自分にとって適切なものなんだ。
それは、ただの「事実」だ。君がまず、怖れに縛られているのなら、君の頬を叩いて目を覚まさせてくれる誰かが必要だ。

ガブリエラ:本当にそうね。このインタビューでは、本当に沢山のことを学びきづかされたわ。あなたたちとここに座ってよかった(笑顔)

Morten:君は、自信を持てるだけの要素がすべて備わっているよ。それは君が見せてくれたことだ。そうだろ。

ガブリエラ:まだ、私、心配そうに見える?

(会場笑)

Morten:とても自然だよ。

ガブリエラ:うん

Morten:でも、君が見せてくれた事実は君の中に住んでる。それは消えることはない。質問は、自分自身に対して何を使うかってことなんだ。これからの道筋で、きっとみつけることができるよ。

ガブリエラ:うんうん。

ーでも、モートン… 詳しく知っているわけじゃないけど、あなた、恐れに対するクリニックを開いたらいいんじゃないかしら。

あ、そうじゃなくて(笑)

Morten:僕たちはあと4日くらいここにいる必要があるね(笑)

(会場笑・拍手)

ーガブリエラ、今日は、歌詞の背景や今日出る曲について、沢山語ってくれて嬉しかったわ。今は何が一番楽しみ?音楽を作ってそれを世にだすとき、何が一番楽しいのかしら

ガブリエラ:外で演奏する事ね。ツアーにでるのが久しぶりだから。新しい曲を演奏することにたまらなく飢えてるの。あと、自分自身、バンドそしてコーラス隊のために、舞台にたつことにもね。誰も期待しない、誰も何をすべきか言わない、誰も「すぐに、ギャビー」って言わない、「ギャビー」とだけ言ってくれる。

Morten:期待されるばかりのことから離れるんだね。とても素晴らしく見えるよ。

ーもちろん、これから新曲を演奏してくれるのよね。バンドを迎えて準備をお願いします

お話ありがとう。そして、モートン…… ありがとう…えっと

Morten:補助に?

(会場笑)

ーセラピーよ!どうもありがとう!!

いやぁ、これまでみたモートンの出ているトーク番組(何度かのSkavlan、Lindmo)やインタビューの中で最高だったんじゃないでしょうか。ガブリエラの言う期待は「過度な期待」なんでしょうね。重圧というか。この年齢になったら当然子供をもつわよね、結婚するだろ…みたいなのは、ノルウェーでもあるんだなと思いました。レゴランドとかファミリーパックとか…(笑)さしずめ、日本ならディズニーやUSJ、ファミレスといったところでしょうか(Toroはファミレスではなく、体に優しい食品メーカーだそうです)。

前半のインタビューで、モートンが全てをいったん手放して自分に向き合ったという部分があるからこそ、そしてそれが90年代はじめすなわち、モートンが今のガブリエラ(34歳)世代だった頃のことだからこそ、「僕はその感情を知っている」って言えるんでしょうね。モートンが結婚したのは89年(30歳)で、離婚したときが98年(39歳)。モートンとの離婚時のインタビューで、カミーラは「子育てを一人でやらざるを得なかった」というようなことを言っていた記憶がありますから、まさに『両立できなかった』ことで色々思うところがあったのではないでしょうか。どんなことも、努力なしでは存続しつづけられないとか。

「不安と恐れの区別」は、納得しました。不安は事実を並べれば解消できること。不安の上にあるのは事実で、恐れの上にあるのは(根拠のない)推測。倒れたら倒れたままにする、敢えて何かの推測の上で動くということをしない、というのが「不安と怖れ」の区別をつけるために必要だったプロセスだったのかもと思いました。最後のほうの、「君が自分に自信をもてるだけの要素は備わっている」とか、「何かを永続させようとして試すことも才能」とか、それこそが最初のほうで言っていた「自分に備わっているものは戻ってくる」ということなのでしょう。

どうしても普段生活していると、出来ないことばかりに目を向けて、漠然とした不安に怖れを誘発されるけれど、不安は事実でどうにかなる、自分の中にあるものは消えないというのは、すごく励みになる言葉だと思いました。

いつも、インタビューがこれくらい実りあるといいんですけどね(笑)モートンの話をLindmoもガブリエラも揶揄することなく、聞き入ってるのも良かったです。

投稿者: Tomoko

1985年7月4日、期末試験の直前で部活が休みだった日に、たまたまみたテレビ神奈川の「ミュートマ」で『Take On Me』を見てモートンに落ち、8月25日にアルバム発売というので誕生日プレゼントにしてもらって、モートンの声の多才さに感動。その後、タイトルを最後に言うタイプのラジオで「この声綺麗」だと思ったら「I've been losing you」で、これまたモートンだったことから、自分にとって最高の声だと確信。2010年の解散に伴い、翌年からノルウェー語を勉強しはじめ、現在はMCは聞き取れるようになりました。2022/05/20発売の『a-ha THE BOOK』で、モートンのソロについて書かせていただきました。

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