Lindmo モートンインタビューその1 ー今週の見出しと自分に向き合うことについて

9月27日(金)のLindmoにモートンがゲスト出演しました。これまでにも何度か出ていますが、今回は途中から一緒にトークするメンバーとしてガブリエラが混ざり、モートンの癒やし効果が発動することになりました。

26日にはモートンの伝記『Hjemkomst』が発売されており、その結果として、モートンがこれまであまり話していなかった、最初のソロ期間での活動のことも話してもらえる、非常に貴重なインタビューでした。

ガブリエラとのトークを含めると実に6500文字近くにもなったので、区切って投稿します。

まず、前提として、週の頭に「モートン・ハルケット、自分を異端者と感じる」という見出しが週刊誌の記事に出ました。ご存知の通り、訳していないのですが、理由は、記事の中をMorten Harketで検索したら、その一文のところしか出てこなかったからです。前後の会話もなく切り取られてもね。ちなみに、その見出しは「僕は、追放されている人のように感じている」というもの。これについては、実は以前にも話していて、それについては訳していますので、まずはリンクを載せておきます。

「追放者」
「誰だってコミュニティからはじかれるのは嫌だよ 」

では、本題へ。Lindmo 字幕プラス聞き取りしたものです。

https://tv.nrk.no/serie/lindmo/2019/MUHU03005519/avspiller (19分35秒から)


モートン、新聞の見出し「追放者」について語る

今回、みなさんがおめにかかれるのは、最も偉大なポップスター、彼は成長し、モートン・ハルケットは60歳になり、10月には本も出版されます。そして、冬まではa-haのメンバーと大きなツアーの真っ最中です。ですが、今はここにいます。モートン・ハルケットです。

ーようこそ!

Morten:ありがとう

ー今週、私はずっとモートン・ハルケットのことを考えていました

Morten:そうなんだ?フルネームで?(笑)

ーええ、私は敬意を払うということを知っているもので(笑)

Morten:モートンについて、何かいつもと違う考えでもあった?

ー今週は思いやりとかそういった類いのことを考えざるをえなかったの。近くのコンビニでカラー印刷の週刊誌の 表紙が目についたの。あなたの顔と「追放者だと感じている」という見出しがあったわ。見出しとはいえ……

Morten:見出しっていうのは、多くの人の目に触れてなんぼだから。あて損なうと、ただ無意味なものになるよね
ーでも、その背景にあることは、本当のこともあるんでしょう?

Morten:あれはね、有名になるということがどういうことかっていうことの話の一部を引き抜いただけでしかないんだ。
誰もが自分の居場所というものを持っている。それが、あるとき突然ひっくり返るんだ。
群衆の中の一人としての自分というのは、なくなってしまう。
僕が言ったのはそういうことだったんだよ。
どの瞬間も、一日中、ずっとその(有名になったという)影響は出てくる。
それは電車でとか、バスでとか、タクシーでとかいうのではなく、どこにいたとしても、自分の知らない人全てが君に関わる可能性の ある人ということになる。
周りのみんなが「君が変わったかどうか」というのを聞く。でも、それは君と関わりのある人みんなに言えることになるんだ。

ーそういったことについて、a-haの中ではどう変わりましたか?

Morten:バンドの中でってこと?……僕たちは、僕たちの目指すものや、これから自分達が起こすことにともに熱心に取り組んでいた時があった。(a-haは)素晴らしい場所だった。
僕らは、自分たちが感じたこととかをベースにして、四六時中音楽を作っていたんだ。
その頃から、その頃から、徐々に関係が崩れてきて、そのうち、お互いになかなか一緒にいられなくなってしまった。
長い間そうだった。貨物列車にひかれて、そのまま数年間ゲレンデに放置されてるかのようだった。
幸い、そんな状態になる前に沢山、音楽を作っていたからそこから、沢山もってこられたんだ。

転機、そして自分と向き合うことに

ーa-haが一緒にやったことについては、壮大な叙事詩のような話がありますが、そのうちの一つとして91年のRioがありますね
あなたたちはコンサートに登場し、一つのコンサートでの集客世界一の記録を打ち立てました。
約20万人の人が集まったわけですが、そのとき、あなたの頭の中では何が起きていましたか。

Morten:僕らにとっては「いつも通りのお仕事」だったのさ。僕らはそこで、僕たち自身だっただけ(笑)
ああ、いや、そういうことを言いたかったんじゃないんだ(笑)
でも、それは僕らが抱えていたことでもある。
その状況下で僕は自問自答したんだ、
「OK,これは僕にとっての転換期だ、そしてこれは続き、その後に複数の転機になるだろう」って。
どこを目指したいのか、何がしたいのかって。

ーそれで、あなたが得た答えはなんですか

Morten:僕そこで僕は、自分に問いかけたんだ。なんで、この状況に全力で立ち向かえないのかということを。自分のしてきたことを過小評価したくはない。それは正しくない。でも、同時に、自分を押し戻してるものがあるとわかっていた。自分が、自分自身に100%アクセスできる状態ではないということはわかったんだ。僕は自分自身をもっと理解する必要があった。

ーこの熱狂的なハイライトにおいて、あなたは「もうこれで終わりか」とかそういったことを認識しなかったんですか

Morten:いや、うん、全てを手放す準備は出来てたよ。システムにバグが生じていることはわかっていた。でも、どこに(バグが)生じているかはわからなかった。それを見つける唯一の方法は、ある種の男性的な方法しかなかった。全てを切り離すことにしたんだ。

ー切り離す?

Morten:そう全てね。話すことをやめ、関わることをやめ、心配することもやめ、そして上手くいかないことを防ぐことをやめた。
僕はずっと色々気にかけてきた。

ーそれで、あなたが放置したら…

Morten:倒れたものは、倒れたままにした。誰かがひっくり返したのなら、そのままにした。僕は、最上階から全て投げ捨てなくてはいけなかったんだ。そして、落ちているものに目を向けたんだ。それは、僕が何度かしてきたかなり大胆な方法で、経験することとしては奇妙なものではあったけど、とても効果のある方法でもあった。それは、現実的に「真実を見極めるフィルタ」なんだ。

ーええ、それで…えっと

Morten:僕は、純粋なもの、正当なもの・本物は戻るようにしたんだ。

ー随分と大がかりな大掃除ですね

(会場笑)

Morten:ははっ、ホントそうだね(笑) この尖ったリフォーム方法は、正しい形に整えてくれた。


もう、これだけでも十分、満足できる内容なのですが、まだこれで全体の1/3程度です。冒頭に書いたように、モートンはこれまでも有名人であることについてのデメリットみたいなのは語っていて、それが見出しになっただけなので、あまり騒ぐようなことではないと思っています。

今回、新たに知った話題はこの後半部分の自分と向き合った経緯のところですね。マラカナスタジアムでの転機を経て自分と向き合い、自分にとって必要なものは離れていかない(戻ってくる)という、(モートンは男性的といっていますが)要するに力業を駆使したという部分。抱え込み過ぎたらいったん全てを手放しましょうというのはよく言われることではありますが、本当にやったのね…と。それでもファンというのはついてくるわけで…。

ちょっと今仕事のことで悩んでるものですから、モートンのこの「倒れたままにしておく」「起こりそうなことを防がない」というのは、自分にとっては、心に刺さりました。91年というと、モートンはこのときまだ、32歳だったはず。その時点で達観したのかと思うと、尊敬します。

投稿者: Tomoko

1985年7月4日、期末試験の直前で部活が休みだった日に、たまたまみたテレビ神奈川の「ミュートマ」で『Take On Me』を見てモートンに落ち、8月25日にアルバム発売というので誕生日プレゼントにしてもらって、モートンの声の多才さに感動。その後、タイトルを最後に言うタイプのラジオで「この声綺麗」だと思ったら「I've been losing you」で、これまたモートンだったことから、自分にとって最高の声だと確信。2010年の解散に伴い、翌年からノルウェー語を勉強しはじめ、現在はMCは聞き取れるようになりました。2022/05/20発売の『a-ha THE BOOK』で、モートンのソロについて書かせていただきました。

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